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社会福祉士を目指す理由:動機と現実、将来性まで解説

社会福祉士を目指す理由:動機と現実、将来性まで解説

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こんにちは。福祉キャリアの羅針盤、運営者の「福祉屋」です。

「社会福祉士を目指す理由」で検索されたあなたは今、この資格や仕事に興味を持ち始めている段階かもしれませんね。社会の役に立ちたい、困っている人を支えたい、そんな素敵な動機をお持ちなのかなと思います。

一方で、社会福祉士の仕事について調べると、やりがいや魅力といったポジティブな情報のほかに、きつい、やめとけ、給料安いといったネガティブなキーワードも目に入り、不安になっているかもしれません。本当に自分に向いている人なのだろうか、資格取得ルートや難易度はどうなのか、もし目指すとしたら志望動機はどう伝えればいいのか、そして将来性はあるのか…など、知りたいことがたくさんあるかと思います。

この記事では、そんなあなたの疑問や不安に寄り添いながら、社会福祉士を目指す理由を「動機」「やりがい」「現実」「将来性」といった多角的な視点から掘り下げていきます。私自身の体験談も交えながら、できるだけリアルな情報をお伝えできればと思います。

  • 社会福祉士を目指す多様な動機と、仕事のやりがい
  • 「きつい」「給料が安い」と言われる現実的な側面
  • 運営者の体験談と、採用される志望動機の作り方
  • 資格取得の方法から将来性、キャリアパスまで

社会福祉士を目指す理由:動機とやりがい

社会福祉士を目指す理由:動機とやりがい

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まずは、多くの人がなぜ社会福祉士を目指すのか、その動機や仕事の魅力、そしてウワサされる「きつい」現実について、運営者である私の体験談も交えながら掘り下げていきますね。

多くの人が目指す背景には、個人の「原体験」(例えば、家族の介護経験など)や、特定の社会課題(貧困や児童虐待など)への強い関心、そして「専門職」としてのキャリアを築きたいという実利的な動機まで、本当に様々です。ここでは、そうした動機を支える「仕事の魅力」と、その裏側にある「現実」を具体的に見ていきましょう。

社会福祉士のやりがいと魅力

社会福祉士の仕事は、決して楽なことばかりではありませんが、それを上回るほどの「やりがい」があるのも事実です。私が長年この業界にいて感じる主な魅力は、以下の点ですね。

相談者さんからの「ありがとう」

一番のやりがいは、やはりこれに尽きるかなと思います。社会福祉士は、経済的な困難、家庭の問題、病気や障害など、本当にシビアな悩みを抱えた方々の相談に乗ります。時には、制度の狭間で誰にも助けを求められずにいた方と出会うこともあります。

私たちができるのは、魔法のように問題を消すことではありません。しかし、その方の話に真摯に耳を傾け、利用できる制度を探し、関係機関と必死に調整することで、問題が解決に向かったり、相談者さんやご家族の表情が明るくなったりした時に、「あなたに話してよかった」「ありがとう」「助かりました」と直接言っていただけることがあります。この瞬間は、これまでの苦労がすべて報われるような、何物にも代えがたい喜びがありますね。

幅広い活躍の場とキャリアの多様性

社会福祉士の資格は、活躍の場が非常に広いのが大きな魅力です。高齢者施設や障害者施設はもちろん、病院(医療ソーシャルワーカー)、行政(市役所や福祉事務所)、児童相談所、学校(スクールソーシャルワーカー)、社会福祉協議会、さらには民間企業の人事・労務部門まで、支援を必要とする人がいる場所すべてが職場になり得ます。

キャリアの「防衛的魅力」
福祉の現場は、残念ながら人間関係のストレスや過度な業務負担で燃え尽きてしまう(バーンアウト)可能性もゼロではありません。しかし、社会福祉士なら、もし一つの職場でうまくいかなくても、資格を活かして全く別の分野(例:高齢者福祉→児童福祉、医療機関→行政、NPO→学校)へ転職しやすいです。

この「分野を変えてキャリアを継続できる」という柔軟性は、精神的な負担が大きいこの業界で長く働き続ける上での、強力な「お守り」であり「防衛的魅力」になると私は思います。

「専門職」としての誇り

社会福祉士は、「社会福祉士及び介護福祉士法」に基づく、相談援助に関する専門知識と技術を国に認められた国家資格です。これは単なる肩書きではなく、「専門職」としての誇りにつながります。

特に、医師や看護師、リハビリ専門職(OT/PT/ST)、行政の担当者など、多様な専門職と「チーム」で支援を行う際、社会福祉士は福祉のプロとして、制度や地域資源をつなぐ「調整役」を担います。

もちろん、この「調整」は簡単ではありません。各専門職の立場や価値観がぶつかることもあります。しかし、その板挟みになりながらも、本人にとっての最善の利益(ベスト・インタレスト)は何かを考え抜き、チームの連携がうまく機能して、難しいケースが良い方向に進んだ時の達成感は、本当に大きいですね。

きつい?社会福祉士やめとけの真実

きつい?社会福祉士やめとけの真実

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さて、ポジティブな側面だけでなく、ネガティブなウワサについても、しっかり触れておきます。「社会福祉士 やめとけ」なんて検索キーワードも出てくるくらいなので、不安に思う方もいるでしょう。なぜそう言われるのか、その「きつい」と言われる現実的な理由を、私なりに分析してみました。

精神的・感情的な負担

これは、この仕事の宿命かもしれません。相談内容は、前述の通り、貧困、虐待、家族関係の破綻、予期せぬ病や死など、非常にシビアなもの 多いです。相談者のネガティブな感情や、時には怒り、八つ当たりといった言動を真正面から受け止めるため、自分自身の感情も引きずられてしまいやすいという側面はあります。

また、支援したいと思っても、制度の壁、リソースの不足、ご本人の意欲や能力、家族の非協力など、様々な要因でうまくいかないケースにも必ず直面します。「助けたいのに助けられない」という無力感やジレンマは、強い精神的負担になることがありますね。

倫理的ジレンマという「きつさ」
例えば、自分の価値観では到底受け入れがたい(例:子どもへの暴力)ケースに直面しても、社会福祉士は「非審判的態度」という専門職の倫理に基づき、相談者を責めずに対応し、その背景にある問題を理解しようと努めなければなりません。この、自分の感情と専門職としての倫理の間で悩み続けるジレンマこそが、社会福祉士特有の「きつさ」の一つだと言えます。

業務量と人間関係

社会福祉士の仕事は、相談業務(面接)だけではありません。むしろ、それ以外の業務のほうが多いかもしれません。

  • 制度活用のための煩雑な書類作成
  • 関係機関(病院、行政、学校、施設など)との電話・訪問による連携・調整
  • 支援会議のセッティングと運営、議事録作成
  • 日々の支援内容の膨大な記録・書類作成

…など、業務は多岐にわたります。正直、デスクワークに追われる時間もかなり長いです。

介護業務との兼任問題
特に介護施設などでは、人手不足から、本来の相談業務(生活相談員としての業務)だけでなく、食事や入浴の介助、排泄介助といった介護業務を兼任せざるを得ないケースも(残念ながら)あります。「相談援助の専門家」として働きたいと思って入職した人にとって、これは大きなギャップになり、「こんなはずじゃなかった」と辞めてしまう原因にもなり得ます。

さらに、前述した「多職種連携」はやりがいであると同時に、価値観の異なる専門職間の「調整役」としての難しさも伴います。板挟みになることも多く、人間関係のストレスを感じる人も少なくないですね。

社会福祉士の給料は安い?待遇の現実

「国家資格なのに給料が安い」という話もよく聞きます。これは、社会福祉士を目指す上で、最も気になる現実的な問題かもしれませんね。

正直に言うと、全産業の平均年収と比較すると、社会福祉士の平均年収はやや低い傾向にあるのは事実のようです。ある調査データでは、社会福祉士の平均年収が約403万円であるのに対し、日本の全産業の平均は約433万円という結果もあります。

ただし、この「平均」という数字だけを見て「安い」と決めつけるのは、少し早いかなと思います。重要なのは、業界内での比較と、平均値には表れない内部格差です。

給与に関するデータ(あくまで一例です)

  • 介護福祉士の平均年収(約292万円~331万円)よりは高い傾向にあります。
  • ケアマネジャー(介護支援専門員)(月収約37.7万円)と比べると、同等かやや低い場合もあります。
  • 同じ社会福祉士でも、性別(男性: 約439万~473万円 vs 女性: 約339万~365万円)や、雇用形態(正規職員と非正規職員)では大きな差が存在します。
  • 勤務先(例:公務員として働く行政機関や、診療報酬が安定している医療機関は比較的高く、小規模なNPO法人や民間施設では低いなど)によっても、給与水準は大きく異なります。

※これらの数値は調査時期や機関によって変動します。あくまで一般的な傾向として捉え、実際の求人情報などで具体的な待遇を確認してください。

「名称独占資格」のジレンマ

では、なぜ国家資格なのに給与が上がりにくいのでしょうか?

その根本的な構造要因の一つに、社会福祉士が「名称独占資格」であることが挙げられます。これは、非常に重要なポイントです。

名称独占 vs 業務独占

  • 業務独占資格(医師、弁護士など)
    その資格がないと、その業務(医療行為や法務)を行うことができない。専門性の不可欠度が非常に高い。
  • 名称独占資格(社会福祉士、保育士など)
    その資格がなくても、業務(相談援助や保育)自体を行うことはできてしまう。資格がないと「社会福祉士」と名乗れないだけ。

この「資格がなくても業務はできてしまう」という法的な位置づけが、専門職としての給与水準の抑制や、病院などで「看護師にはある資格手当が、社会福祉士にはない」といった待遇の差につながっている面は否めません。これが、資格を取っても報われないという「きつさ」や無力感を生む温床になっている、と私は分析しています。

社会福祉士に向いている人の特徴

ここまでの「やりがい」と「きつい現実」を踏まえて、どんな人が社会福祉士に向いているのか、私なりに考えてみました。これは単なる「優しさ」だけでは測れない、専門的な適性とも言えます。

「管理された共感」ができる人

「人の話を親身になって聞ける」という共感力は、絶対に必要です。これがなければ、相談者さんとの信頼関係は築けません。相談者の苦しみや痛みに、心から寄り添おうとする姿勢が土台となります。

しかし、ただ共感するだけではダメなんです。相談者の感情の渦に巻き込まれて一緒に落ち込んでしまったり、一緒になって怒ったりしては、プロとしての支援はできません。

相手の辛さに深く共感しつつも、頭の中は冷静に「今、この人に必要な制度は何か」「どの機関と連携すべきか」「法的な論点は何か」を分析し、機能的に動ける能力。

私はこれを

「管理された共感(Managed Empathy)」

と呼んでいます。熱い心(共感)と冷たい頭(冷静な分析・調整)を両立できる人、あるいはそうあろうと努力し続けられる人が、この仕事に向いていると思います。

調整能力と行動力がある人

社会福祉士の仕事は「調整」の連続です。本人と家族、病院と施設、行政とNPOなど、様々な人の間に立ち、時には利害が対立する中で、粘り強く合意形成を図っていく必要があります。高いコミュニケーション能力とフットワークの軽さ(行動力)は必須ですね。机上でプランを考えるだけでなく、自ら動いて関係機関を説得し、リソースをかき集めてくるようなバイタリティも求められます。

社会課題への関心がある人

目の前の「個人」を支援するだけでなく、その個人を苦しめている「社会の仕組み」や「制度の不備」に対しても関心を持てる人が向いています。「なぜこの人は、こんなに困窮しなければならないのか?」という問題意識を持ち、より良い社会のあり方を考えられる視点も大切です。

逆に向いていない可能性のある人

一方で、以下のような特徴がある人は、ご自身が辛くなってしまう可能性があるので、少し立ち止まって考えてみる必要があるかもしれません。

  • 相手の言動に振り回されやすい人:相談者のネガティブな言葉をすべて正面から受け止めてしまうと、心が持ちません。ある種の「受け流すスキル」も必要です。
  • 感情的になりやすい人:理理尽な要求やクレームに対し、カッとなってしまうと信頼関係は崩壊します。冷静さを保つ自己コントロール能力が求められます。
  • 「助けてあげたい」という思いが強すぎる人:支援の基本は「本人の自己決定の尊重」です。支援者が「良かれ」と思ってレールを敷きすぎると、それは本人のためになりません。「助ける」のではなく「(本人が力を取り戻すのを)支える」というスタンスが重要です。

体験談:採用試験で聞かれた「自己覚知」

ちなみに、私が昔、施設の採用試験を受けたときに「自己覚知についてどう思いますか?」と聞かれたことがありました。
当時は正直ちんぷんかんぷんだったんですが、今思うと、これこそが社会福祉士の核心をついた質問だったと思っています。

「自分を知ること」って本当に大切で、自分は怒りっぽいとか、いつも笑顔だとか、知っているつもりでも知らない部分も多いですよね。社会福祉士は、自分の感情をコントロールし、時には意図的に感情を表出する(例:共感を示す)ことも求められます。だからこそ、自分のクセや感情のトリガーを知っておく「自己覚知」はマストなんです。

私は、特に「共感的理解」を実践するときにこれを意識します。
けっこう無意識に、相手の感情に深く寄り添う「共感」ではなく、単純な「同意」(「そうですよねー」みたいな)の言葉を発する癖があるので、今でも気を付けています。
まさに、自己覚知ができていないと、本当の意味でのソーシャルワークはうまくいかないんです。

体験談:私が社会福祉士を選んだ理由

ここで改めて、少し私自身の話をさせてください。私が社会福祉士を目指したのは、高校生の頃でした。

理由はとても単純で、「人の役に立つ仕事がしたい」ということ。本当に漠然とした、青臭い動機だったと思います(笑)。

ただ、それと同時に、「これから日本は高齢化が進むから、福祉の仕事は需要があるだろう」という、ちょっと現実的な計算もありましたね。人の役に立ちたいという「思い」と、仕事として「安定」していそうという「現実」、その両方を満たしてくれそうなのが、福祉の道だったんです。

でも、その「人の役に立ちたい」という根本的な思いは、福祉の大学に進んでからも、実際に現場に出てからも、変わらずに自分の軸になっていると感じます。シビアな現実に直面して「きつい」と感じた時も、この原点が自分を支えてくれました。

体験談:オールラウンダーとしての強み

数ある福祉の資格の中で、なぜ社会福祉士だったのか。それは、「オールラウンダー」としての魅力があったからです。

例えば、同じ国家資格である「介護福祉士」は、介護の技術に特化したプロフェッショナルです。それに対して「社会福祉士」は、介護の知識はもちろん、制度全般(生活保護、障害者福祉、児童福祉、医療保険、年金など)の仕事もできます。

つまり、活躍のフィールドが「介護」に限定されず、就職先も、高齢者施設、障害者施設、児童施設、病院、社会福祉協議会、行政(市役所)、さらには刑務所まで、本当に幅広いんです。

実際、私はこの「オールラウンダー」という資格のおかげで、市役所の福祉課(公務員)として働くこともできましたし、その後、医療機関の営業職に転職した今でも、介護保険や医療制度、各施設(特養、老健、グループホームなど)の機能の違いといった現場の知識が、営業活動や多職種連携にめちゃくちゃ役立っています。

この「つぶしの利く専門性」こそが、私が実感する社会福祉士の最大の強みですね。

採用される社会福祉士の志望動機

もしあなたが社会福祉士を目指すとして、就職・転職活動で「志望動機」を聞かれたらどう答えるでしょうか。ここは、あなたの「目指す理由」が試される、非常に重要なポイントです。

なぜなら、採用側(特に現場の管理職)は、これまでお話ししてきた「きつい現実」を骨身に染みて知っているからです。だからこそ、「この人は、その現実を理解した上で、それでもウチで長く働いてくれる人か」を厳しく見ています。

NGな志望動機の例
「私は、人の役に立ちたいと思い、社会福祉士を目指しました。貴施設(法人)の理念に共感し、地域社会に貢献がしたいです。」

…これ、私が高校生の頃に抱いた動機とほぼ同じですが(笑)、これだけだとNGです。なぜなら、「人の役に立ちたい」「社会貢献したい」というのは、どの福祉施設でも言えることであり、「ボランティアではなく仕事である」という視点も抜け落ちているからです。

これでは、「なぜ、他の施設ではなく、ウチの施設を選んだのか」が全く伝わりません。「理念に共感」というのも、具体的にどの部分にどう共感したのかを語れなければ、ただの定型文になってしまいます。

評価される志望動機の3要素

採用担当者に「おっ」と思わせる志望動機には、以下の3つの要素が具体的に含まれている必要があります。

  1. なぜ「社会福祉士」なのか(Must)
    あなたの「原体験」や「社会課題への関心」、「オールラウンダーとしての魅力」など、職種を選んだ明確な理由。
  2. なぜ「他の施設ではなく、そこ」なのか(Want)
    その施設(法人)の理念、事業内容、特定の取り組み(例:「地域密着型の小規模多機能を強化している」「生活困窮者の自立支援で実績がある」など)を具体的に調べ上げ、「だからここで働きたい」という熱意。
  3. 自分は何ができ、どう貢献できるか(Can)
    「前職(または学生時代の経験)で培った〇〇というスキル(例:PCスキル、調整能力、特定の分野の知識)を、相談業務や運営にこう活かせる」という、組織人としての貢献意欲。

「人の役に立ちたい」という純粋な動機(Why)を、「この職場で、自分のこの経験(Can)を活かし、〇〇という取り組み(Want)にこう貢献する」(What/How)という、具体的かつ組織の論理に沿った言葉に「翻訳」することが、採用される志望動機のカギですね。

【ケース別】志望動機のアピールポイント

さらに、志望する「職場」によって、強調すべきポイントは異なります。

  • 介護施設(高齢者福祉)の場合
    家族の介護経験といった「原体験」や、「地域社会に根差した支援」への関心を結びつけやすいです。「なぜ高齢者分野なのか」を明確にしましょう。
  • 医療施設(MSW)の場合
    「患者さんの退院支援や、病気と向き合いながらの地域生活を支えたい」という明確な動機が求められます。多職種連携の要としての役割理解も重要です。
  • 行政(福祉事務所など)の場合
    「目の前の人だけでなく、制度や仕組みといった、より広範な福祉業務に携わりたい」という意欲が評価されます。公平性・公正性といった公務員としての適性も問われます。

社会福祉士を目指す理由:現実と将来性

社会福祉士を目指す理由:現実と将来性

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動機や仕事内容がわかったところで、次は「どうやってなるのか」という具体的なルートと、資格を取った後のキャリアについて、さらに詳しく見ていきましょう。

社会福祉士の資格取得ルート

社会福祉士になるには、年に1回(例年2月上旬)実施される国家試験に合格し、社会福祉士としての登録申請が必要です。その前提として、国家試験を受けるための「受験資格」を得る必要があり、そのルートが個人の最終学歴や実務経験に応じて、なんと10種類以上に細かく分かれています。

全部を説明すると混乱してしまうので、ここでは代表的なルートをいくつか紹介しますね。

社会福祉士 受験資格取得ルート(代表例)
あなたの最終学歴・経歴 必要なステップ 備考
A. 福祉系大学(4年)
(指定科目 履修)
卒業 最短ルート。卒業と同時に受験資格取得。
B. 福祉系大学(4年)
(基礎科目 履修)
卒業 + 短期養成施設(6ヶ月以上)修了 履修した科目が「基礎科目」のみだった場合。
C. 一般大学(4年)
(福祉系以外)
卒業 + 一般養成施設(1年以上)修了 社会人や他学部出身者が目指す王道ルート。
D. 福祉系短大(3年)
(指定科目 履修)
卒業 + 相談援助実務経験(1年) 卒業後の実務経験が必要。
E. 福祉系短大(2年)
(指定科目 履修)
卒業 + 相談援助実務経験(2年) 卒業後の実務経験が必要。
F. 相談援助の実務経験(4年以上)
(学歴不問)
実務経験4年 + 一般養成施設(1年以上)修了 学歴要件を満たさず、現場経験から目指すルート。
G. 精神保健福祉士 資格保有者 短期養成施設(6ヶ月以上)修了 ダブルライセンスを目指す場合の優遇措置。

(※上記はあくまで代表例を簡略化したものです。詳細は必ず試験センターにご確認ください。)

このように、自分の学歴や持っている資格、実務経験によって、通うべき「養成施設」が「短期(6ヶ月以上)」で済むのか、「一般(1年以上)」必要なのかが変わってきます。

受験資格の確認は必須!
「この実務経験はカウントされる?」「私の学歴だとどのルート?」など、受験資格のルートは本当に複雑です。「実務経験」として認められる職種・施設も細かく規定されています。

思い込みで判断せず、必ず「社会福祉士国家試験」を運営している、(公財)社会福祉振興・試験センターの公式サイトで最新情報を確認するか、直接問い合わせるようにしてください。ここで間違うと、時間もお金も無駄になってしまいます。

(参照:社会福祉振興・試験センター『[社会福祉士]受験資格(資格取得ルート図)』

社会福祉士の難易度と合格率

国家試験の難易度は気になるところですよね。合格率は、年度によって変動しますが、だいたい30%~40%台で推移していることが多いです。(ちなみに2023年度・第35回は44.2%、2024年度・第36回は58.1%と、近年は上昇傾向も見られます)

「え、合格率50%前後なら、そこまで難しくない?」
「いや、30%台だった頃を考えると、やっぱり難しいんじゃ…」

この数字の解釈は分かれるところだと思います。確かに、看護師(合格率約90%)などと比べると低く見えます。しかし、これには理由があると思っています。

社会福祉士の受験生には、働きながら限られた時間で勉強している社会人が非常に多いんです。養成施設(特に通信制)に通いながら、仕事や家事と両立して勉強時間を捻出するのは、本当に大変なことです。そのため、十分な対策ができずに本番を迎える人も一定数含まれており、全体の合格率が押し下げられている側面があるのかなと。

実際、福祉系大学(新卒)や、通学制の養成施設の合格率は60%~80%台に達することもあります。つまり、試験の難易度そのものが極端に高いというよりも、受験生の置かれた多様な環境が合格率に影響していると言えます。質の高い養成施設で集中して学習し、しっかり過去問対策をすれば、決して合格できない試験ではありません。しっかり準備すれば大丈夫ですよ。

(もし、働きながらの勉強法に不安がある方は、社会福祉士に働きながら合格するための勉強法を解説した記事も参考にしてみてください。)

社会福祉士の将来性とキャリアパス

資格を取った後、どんな未来があるのか。私は、社会福祉士の将来性は非常に高いと思っています。

ご存知の通り、日本は「少子高齢化」と「人口減少」がますます進んでいきます。福祉サービスを必要とする人は増え続ける一方で、家族や地域コミュニティの支える力は弱くなっています。その結果、貧困や孤立、虐待といった社会課題は、より複雑化・深刻化しています。

そんな中で、人と制度、人と社会をつなぐ「調整役」であり、「専門家」である社会福祉士の役割は、今後ますます重要になるはずです。AIやロボットに代替されにくい、まさに「人」にしかできない仕事の核心部分を担っているからです。

活躍の場も、高齢者福祉関係(約39.9%)が最も多いですが、障害者福祉関係(約17.7%)、医療関係(約15.1%)、児童・母子福祉関係(約8.2%)、行政(約6.7%)など、本当に多岐にわたります(※データは一例)。この「キャリアの多様性」こそが、将来性そのものだと言えますね。

独立やダブルライセンスという選択肢

独立やダブルライセンスという選択肢

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社会福祉士のキャリアは、一つの施設で勤め上げることだけではありません。資格を活かして、キャリアアップやキャリアチェンジを図る道も開かれています。

ダブルライセンス(専門性の「掛け算」)

社会福祉士の資格と親和性の高い資格を組み合わせて「ダブルライセンス」として取得することで、対応できる業務範囲が広がり、専門性が格段にアップします。

  • vs 精神保健福祉士
    福祉全般の知識に加え、「精神医療・精神障害分野」の専門性が加わります。高齢者、障害者、児童、生活困窮など、あらゆる分野で「こころの問題」は切っても切れないため、この2つの資格を持つことは、最強のソーシャルワーカーとして活躍できることを意味します。
  • vs ケアマネジャー(介護支援専門員)
    社会福祉士の相談援助技術に加え、介護保険制度の中核業務である「ケアプラン作成」を担えるようになります。特に高齢者福祉分野でのキャリアアップ(給与水準の向上を含む)に直結しやすい、非常に実務的な組み合わせです。
  • vs 保育士
    児童養護施設や障がい児施設、児童相談所、母子生活支援施設など、「児童福祉分野」で働く際に、福祉(親・家庭支援)と保育(子ども支援)の両面からアプローチできる専門家として、非常に強力な組み合わせとなります。

上級資格(専門性の「深化」)

特定の分野での専門性を「深化」させる道もあります。社会福祉士の上位資格として、「認定社会福祉士」および「認定上級社会福祉士」という制度が存在します。これらは、特定の分野(例:高齢者、障害、医療、児童など)で高度な知識と技術、実績を持つことを証明するものであり、組織内のスーパーバイザー(指導・教育役)としての役割や、さらなるキャリアアップにつながります。

独立・開業(フリーランス)

組織に所属することで生じる「きつい現実」(低賃金、組織の制約、人間関係、介護業務との兼任など)の多くは、「組織への所属」に起因する問題です。

これらの制約から解放され、自らの専門性に見合った働き方や収入を追求するキャリアパスの最終形態の一つが「独立・開業」です。

  • 成年後見人
    判断能力が低下した方の権利や財産を守る「成年後見人」(法定後見人・任意後見人)として、家庭裁判所からの選任や個人との契約に基づき活動します。(※職能団体への登録等が推奨されます)
  • 請負型(フリーランス)
    施設や行政機関、学校などと個別に業務委託契約を結び、「医療ソーシャルワーカー」「スクールソーシャルワーカー」「生活相談員」といった業務をフリーランスとして請け負います。
  • 事業所開業
    高齢者福祉サービス(デイサービス、訪問介護など)、児童福祉サービス(放課後等デイサービスなど)、障害者福祉サービス(就労継続支援など)の事業所を自ら立ち上げる道もあります。(※法人格の取得や指定基準を満たす必要があります)

これは、豊富な経験と人脈、経営知識が必要ですが、「自分の専門性に見合った働き方や収入を自分でデザインする」という、非常に魅力的なキャリアパスだと思います。

あなたの社会福祉士を目指す理由を確かなものに

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

社会福祉士を目指す理由は、人の役に立ちたい、社会に貢献したいという純粋な動機から始まることが多いと思います。それは本当に素晴らしいことであり、その「原体験」や「思い」こそが、この仕事を続ける上での一番の原動力になります。

一方で、この記事でお伝えしてきたように、給与の問題、精神的な負担、そして「名称独占」という構造的なジレンマから生じる「きつい現実」も確かに存在します。

しかし、その現実を乗り越えるだけの「やりがい」があり、そして何よりも、一つの職場でうまくいかなくても、資格を活かしてキャリアを再構築できる「多様性」と「発展性」(キャリアの適応力)が、この資格にはあります。

ダブルライセンスで専門性を掛け合わせたり、独立して自らの働き方をデザインしたりと、組織に所属することで生じる「きつい現実」を主体的に回避・克服していく道も開かれているのです。

この記事が、あなたの「社会福祉士を目指す理由」を、単なる憧れから、現実を踏まえた「確かな覚悟」へと深めるための一助となれば、これほどうれしいことはありません。

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