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こんにちは。福祉キャリア羅針盤、運営者の「福祉屋」です。
介護の現場で長年活躍されているあなたが、なぜか筆記試験だけは突破できずに苦しんでいる現状、痛いほどよく分かります。「現場では誰よりも動ける自信があるのに、なぜ紙の上の問題だけが解けないのか」。合格率は高いはずなのに自分だけが取り残されていく焦りや、50代になって記憶力が追いつかず覚えられないもどかしさ、そして周囲の同僚や後輩からの「まだ受からないの?」という無言の視線に耐えながら、何度も不合格通知を受け取る辛さは、言葉では言い表せないものでしょう。もう諦めたほうが楽になれるのではないか、それとも資格手当や将来の給料の差を考えれば歯を食いしばってでも続けるべきなのか、心は激しく揺れ動いているはずです。
この記事では、そんなあなたが陥っているメンタルの罠や構造的な原因を解き明かし、次こそは笑って春を迎えるための具体的な戦略をお話しします。あなたが今まで積み重ねてきた努力は決して無駄ではありません。ただ、その努力の「方向」がほんの少しずれていただけなのです。ここから一緒に、そのズレを修正していきましょう。0回落ちた原因の構造的解明
- 10回連続で不合格になる確率論的な異常性と構造的要因
- ベテラン介護職ほど陥りやすい現場経験の罠と解決策
- 資格の有無が生涯賃金やキャリアに及ぼす具体的な影響
- 次回の試験で確実に合格を勝ち取るための思考と行動の変革
国家試験の中でも比較的合格率が高いとされるこの試験で、なぜ10回もの不合格を繰り返してしまうのか。そこには「運が悪かった」や「努力不足」という言葉では片付けられない、根深い構造的なエラーが存在しています。ここでは、その原因を客観的なデータと心理的な側面から徹底的に解剖していきます。
合格率の高さと裏腹な不合格の確率論

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まず、冷徹な数字の現実から目を背けずに見ていきましょう。近年の介護福祉士国家試験の合格率は上昇傾向にあり、第35回試験では過去最高の84.3%を記録しました。直近の試験でも70%〜80%台で安定して推移しており、これは医療・福祉系の国家試験の中でもトップクラスの合格率です。試験の性質として、落とすための選抜試験ではなく、基本的な知識を確認して「受からせてくれる試験」であることは間違いありません。
ここで、少し確率論の話をさせてください。仮に試験の合格率を平均的な70%と設定した場合、不合格になる確率は30%(0.3)です。単純な確率計算において、これが1回、2回と続き、まさかの10回連続で発生する確率はどれくらいでしょうか。計算式は(0.3)の10乗となり、その答えは約0.00059%です。これを分かりやすく直すと、およそ1,700人に1人という極めて稀な確率になります。
この数字が示している事実は非常に重いです。もし、あなたがマークシートを適当に塗りつぶしたとしても、確率的にはもう少し高い確率で合格できていたかもしれません。つまり、10回落ちるということは「たまたま運が悪かった」というレベルの話ではないのです。学習の方向性、試験に対する認識、問題文の読み方、あるいは解答を選ぶプロセスそのものに、何らかの致命的な「構造的エラー」が起きていると考えるのが自然です。
注意すべき認識のズレ
厳しいことを言うようですが、10回落ちたということは、過去9回の不合格体験から「誤った学習法」を修正できず、むしろその間違いを強固な習慣にしてしまっている可能性が高いのです。毎年同じテキストを買い、同じようにアンダーラインを引き、同じように直前で詰め込む。このループを断ち切らない限り、確率論の壁を越えることはできません。まずは「今までのやり方は通用しない」という事実を受け入れることが、再スタートの第一歩になります。
50代で覚えられない原因と年齢の壁
「若い頃のように頭に入ってこない」「さっき覚えたことをもう忘れている」。50代、60代の受験生から最も多く寄せられる悩みであり、切実な問題です。「もう歳だから無理なのかもしれない」と弱気になる方も多いですが、これを単なる「年齢のせい」にして諦めるのは早計です。
脳科学の視点で見ると、人間の知能には大きく分けて2つの種類があります。一つは新しいことを即座に記憶・処理する「流動性知能」、もう一つは経験や知識が蓄積され結晶化した「結晶性知能」です。確かに、単純な暗記力に関わる流動性知能は20代をピークに低下していきます。しかし、言葉の理解力や判断力、経験に基づく知恵である結晶性知能は、60代になっても上昇し続けると言われています。
多くのベテラン受験者が失敗するのは、低下している流動性知能に頼って、学生時代と同じような「丸暗記」で勝負しようとするからです。意味の分からない専門用語(例えば「ICF」「アドボカシー」「エンパワメント」など)を、意味も理解せず呪文のように唱えても、大人の脳は「生存に不必要な情報」として処理し、すぐに忘却してしまいます。
エピソード記憶を活用しよう
必要なのは記憶の仕方の転換です。大人の脳が得意なのは「エピソード記憶」です。「ICF」という単語を丸覚えするのではなく、「あのアセスメントで失敗したのは、ICFの『参加』の視点が抜けていたからだ」「あの利用者さんの事例は、まさにこの法律のケースだ」というように、ご自身の豊富な現場経験(エピソード)と知識をリンクさせるのです。感情や体験と紐付いた知識は、年齢に関係なく脳の深層に刻まれ、強固に定着します。
年齢を理由に諦める必要はありませんが、年齢に合った戦い方にシフトする必要があります。さらに詳しい50代特有の記憶対策や具体的な勉強法については、こちらの記事でも深掘りしていますので、ぜひ参考にしてみてください。
【介護福祉士】勉強覚えられない50代へ!最短合格の裏ワザと対策
メンタルの不調が引き起こす試験恐怖症
「普段の模試では合格点が取れるのに、本番になると頭が真っ白になる」「問題文が文字の羅列に見えて内容が入ってこない」。これは典型的な試験恐怖症(Exam Phobia)の症状です。10回落ちたという事実は、ご自身が思っている以上に心に深い傷(トラウマ)を残しており、「また落ちたらどうしよう」「職場でまた笑われるのではないか」「家族に合わせる顔がない」という過剰なプレッシャーを生み出します。
この心理状態は、心理学で言うところの「学習性無力感」を引き起こします。「どうせ勉強しても無駄だ」「自分には受かる能力がない」という無意識の諦めが、本来持っている実力を発揮することを物理的に阻害してしまうのです。試験会場の独特な静けさ、試験官の監視の目、カリカリという鉛筆の音。これら全てがトリガーとなり、脳の扁桃体が暴走し、理性的判断を司る前頭葉の働きを麻痺させます。その結果、普段なら絶対に選ばないような選択肢を選んだり、マークミスなどの信じられないようなケアレスミスを誘発したりするのです。
「0点科目」という呪縛
特に恐ろしいのが、介護福祉士試験特有の「全科目群での得点必須」というルール、いわゆる0点科目による足切りです。過去に「合計点は合格ラインを超えていたのに、たった1科目だけ0点で不合格になった」という経験がある方は要注意です。その科目の問題を見ただけで動悸が激しくなり、パニックに陥りやすくなります。これはもはや知識量の問題ではなく、完全にメンタルの問題として対処しなければなりません。
対策としては、知識を詰め込むことよりも、リラクゼーション法(腹式呼吸など)の習得や、模試を本番と同じ環境で受ける「リハーサル」を徹底することが重要になります。
現場経験が長いベテラン特有の落とし穴
ここが最も皮肉な点なのですが、実務経験が長ければ長いほど、試験では不利になる「ベテランの罠」が存在します。あなたは現場で、即戦力として素晴らしいケアをしているはずです。利用者のちょっとした変化に気づき、臨機応変に対応できる能力は、新人には真似できません。しかし、国家試験が求めているのは「現場のリアルな対応」ではなく、「国が定める標準的な正解」なのです。
例えば、現場では人手不足や業務効率を考えて、安全確保のために「今はちょっと待っててね」と声をかけたり、やむを得ず身体拘束に近い対応をしたりする場面があるかもしれません。しかし、試験でその対応を正解として選べば、即座に不正解となります。ベテラン受験者は、問題文を読んだ瞬間に「自分の施設ではこうしている」「私の長年の経験ではこれが一番うまくいった」という主観的なバイアス(偏見)がかかってしまうのです。
試験はいわば「建前」を答えるゲームです。教科書的な「あるべき論」を問われているのに、現場の「現実論」で答えてしまえば、当然噛み合いません。「利用者の尊厳」や「自立支援」という理念は理解していても、無意識のうちに「業務の円滑な遂行」を優先した選択肢を選んでしまう。この現場感覚と試験の正解の乖離(ズレ)に気づき、試験中は「現場の自分」を封印して「教科書の自分」になりきる。このアンラーニング(学習棄却)ができない限り、何度受けても合格ラインの少し下をさまようことになります。
独学に固執する勉強法の致命的な間違い

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10回受験している方の多くに見られる特徴として、頑なに「独学」を貫こうとする姿勢が挙げられます。あるいは、「通信講座を受けたけどダメだった」と言いつつ、実際には送られてきた教材をパラパラと眺めただけで終わっているケースも少なくありません。
独学が悪いわけではありませんが、10回結果が出ていない以上、その方法論はあなたに合っていないと断言できます。特に危険なのが以下の3つのパターンです。
- テキストの最初から読む: 全体を把握せずに、1ページ目から順番に細かい数字や用語を暗記しようとする「重箱の隅つつき」学習です。試験に出ない部分に時間を使い、重要項目にたどり着く前に力尽きてしまいます。
- 過去問を力試しに使う: 過去問は「最高品質の学習教材」であり、勉強の最初に取り組むべきものですが、不合格者は「実力を測るテスト」だと勘違いし、試験直前まで取っておく傾向があります。敵を知らずに戦の準備をしているようなものです。
- 答えの丸暗記: 過去問を解いても「この問題の答えは3番」と場所で覚えてしまい、なぜその答えになるのか、なぜ他の選択肢は間違いなのかという「根拠」を説明できない状態です。これでは、問題文が少し変わっただけで対応できなくなります。
独学の最大の弱点は「フィードバックがない」ことです。自分の理解が間違っていても、誰も指摘してくれません。誤った解釈のまま10年間過ごしてしまった可能性もあります。「お金をかけたくない」という気持ちは分かりますが、その結果として10年分の受験料と、何よりも貴重な時間を失っている事実に気づく必要があります。
介護福祉士に10回落ちた後の戦略と決断
さて、ここからは過去の分析ではなく、未来の話をしましょう。10回の不合格という重い事実を背負った上で、あなたは次にどう動くべきか。ここでスパッと諦めて別の道を歩むのか、それとも戦略を根本から変えて11回目の正直を狙うのか。その判断材料となる、お金とキャリアの現実的な情報を提供します。
資格の有無による給料差と生涯賃金

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「資格なんて紙切れ一枚だ」「資格があっても仕事ができない人はたくさんいる」。自分を慰めるためにそう思いたい気持ちもあるでしょう。しかし、資本主義社会において、その紙切れ一枚が持つ経済的価値は残酷なほど明確です。実際のデータを見てみましょう。
| 資格区分 | 平均月給(推定) | 無資格との差額 |
|---|---|---|
| 介護福祉士 | 約33〜35万円 | +5〜8万円 |
| 実務者研修 | 約30〜32万円 | +2〜4万円 |
| 初任者研修 | 約29〜30万円 | +1〜2万円 |
| 無資格 | 約27〜28万円 | 基準 |
介護福祉士を取得することで、毎月の「資格手当」に加え、国からの「処遇改善加算」や「特定処遇改善加算」が重点的に配分されます。これにより、無資格者と比較して月収で約5万円〜8万円の差が出ることが一般的です。年収に換算すれば、賞与への反映も含めると70万円〜100万円近い差になります。
もし、あなたが定年まであと20年働くとしたらどうでしょうか。単純計算でも生涯賃金で約2,000万円もの格差が生まれます。家が一軒買える金額です。10回落ち続けている間に失った「本来得られたはずの収入(機会損失)」は、すでに数百万円〜1,000万円に達しているかもしれません。
(出典:厚生労働省『令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果』https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/22/index.html)
この経済的損失を取り戻すためには、やはり合格するしかありません。より詳細な年収の現実や、資格を取った後に「勝ち組」になるためのキャリア戦略については、以下の記事で解説しています。
介護福祉士で勝ち組になるには?年収600万への現実的戦略
試験を諦めた場合のメリットとデメリット
もちろん、これ以上精神をすり減らさないために「諦める」という選択も、一つの立派な決断です。10年頑張った自分を認め、楽にしてあげることも大切です。
諦めるメリット
最大のメリットは、精神的な解放です。毎年冬に訪れるあの吐きそうなプレッシャー、不合格通知を見た時の絶望感から解放されます。これまで勉強に使っていた時間を、趣味や家族との時間、あるいは利用者さんとのコミュニケーションに充てることで、人生の質(QOL)は確実に向上するでしょう。資格がなくても現場の仕事は続けられますし、人間関係の良い職場なら、そのまま楽しく働き続けることも可能です。
一方で、デメリットも明確に認識しておく必要があります。それは「キャリアの天井」です。訪問介護の「サービス提供責任者(サ責)」や、特別養護老人ホームなどの「生活相談員」、そして多くの施設での「管理者・施設長」の要件には、介護福祉士が含まれていることが多いです。無資格のままでは、どれだけ現場経験があってもリーダー以上の役職に就くことが難しくなります。
また、転職が必要になった際も不利になります。採用担当者は、どうしても「無資格のベテラン」よりも「有資格者の若手」や「伸びしろのある人材」を選びがちです。今の職場に骨を埋める覚悟があるなら良いですが、将来の選択肢が狭まることは覚悟しなければなりません。「逃げ」ではなく、自分の幸せのために「選択」するのであれば、諦めることも間違いではありません。
過去問を活用した戦略的再構築の方法

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もし、ここまで読んでもあなたの心の中に「やっぱり悔しい」「あと一回だけ挑戦したい」という火種が残っているなら、今までのやり方を全て捨ててください。ゼロベースでの再構築が必要です。
合格のための最短ルートは、過去問の戦略的活用に尽きます。多くの人が間違いがちなのが、「テキストを読んで理解してから、過去問を解く」という順序です。これでは間に合いません。「過去問を解いて(見て)から、テキストを読む」のが正解です。
- 初期段階で投入(敵を知る): 今の実力で解けるかどうかは関係ありません。まずは敵(試験問題)を知るために最新の過去問を見ます。どのような言葉が使われているか、どのような形式で問われるかを肌で感じてください。
- 全選択肢の根拠付け(理解を深める): これが最も重要です。正解の選択肢だけでなく、間違いの選択肢についても「なぜ間違いなのか」「どこを直せば正解になるのか」を自分の言葉で説明できるようにします。1問から5つ分の知識を吸収するつもりで取り組んでください。これができれば、問題文が少し変わっても対応できます。
- 反復とスピード(定着させる): 直近5年分を最低3周します。3周目は時間を計り、反射的に根拠が出てくるレベルまで仕上げます。「答えを覚えている」状態でも構いませんが、「根拠」を瞬時に言えるかどうかが合否の分かれ目です。
具体的な過去問の回し方や、合格率84.3%の時代における必勝戦略については、こちらもぜひ読んでみてください。
介護福祉士国家試験:受かる気がしない不安を84.3%の安心に変える合格戦略
11回目の受験に向けた具体的対策

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次回の試験を「人生最後の受験」にするために、以下の誓約を守ってください。
インプットからアウトプットへ転換する
ただ授業を聞くだけ、本を読むだけの受動的な勉強はやめましょう。人間の脳は情報を「思い出した時」に記憶が強化されます。学んだ内容を、同僚や家族、あるいは架空の生徒に向かって説明する「ティーチング技法」や、本を閉じて「今何が書いてあったか」を自分の言葉で要約する「想起練習」を取り入れてください。説明できない部分は、理解していない部分です。
環境を強制的に変える
独学の限界を素直に認めましょう。数万円〜十数万円かかったとしても、受験対策講座に通うか、オンラインスクールを利用してください。そこで「合格する人たちの当たり前の基準」を肌で感じることが重要です。「みんなこんなに勉強しているんだ」という刺激は、あなたの意識を劇的に変えます。お金はかかりますが、合格して給料が上がれば1年で元が取れます。これは消費ではなく「投資」です。
メンタルケアを最優先する
知識不足よりも、試験恐怖症対策が急務です。自宅で過去問を解くときは、本番と同じ時間割、マスク着用で行い、環境に身体を慣らしてください。また、パニックになりかけた時に心を落ち着かせるための「呼吸法(4秒吸って8秒吐くなど)」を練習しておくだけでも、本番でのパフォーマンスは大きく変わります。
介護福祉士に10回落ちた経験を糧に次へ

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「介護福祉士 10回 落ちた」という検索履歴や過去の事実は、決してあなたの恥ずかしい汚点ではありません。それは、何度叩きのめされても、何度絶望しても、それでも立ち上がろうとしたあなたの執念と粘り強さの証明です。その泥臭い努力を知っているあなただからこそ、合格した時には誰よりも深い喜びを感じられるはずです。
もし11回目で合格できれば、その資格証は単なるライセンス以上の重みを持ちます。痛みを知っているあなたなら、同じように試験で苦しむ後輩を心から励まし、痛みを持つ利用者に誰よりも優しく寄り添える、深みのある本物の介護福祉士になれるはずです。
もう一度だけ、今度は「正しい武器(戦略)」を持って戦ってみませんか。その先には、失いかけた自信を取り戻し、胸を張って仕事ができる新しいあなたが待っています。