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こんにちは。福祉キャリア羅針盤、運営者の「福祉屋」です。
「夜中に子供が高熱を出したけれど、手元に医療券がない」「休日の昼間に激しい腹痛に襲われたけれど、役所が閉まっていて連絡がつかない」……生活保護を受給している中で、こうした突発的な事態に遭遇すると、パニックになってしまいますよね。
実は私が福祉事務所で現役のケースワーカーとして働いていた頃も、こうした時間外受診に関する相談や、病院からの緊急連絡はよくありました。人間ですから、役所が開いている平日の9時から17時の間だけに都合よく病気になるわけではありません。夜間や休日に受診が必要になることは誰にでも起こり得ることですから、どうか過度に不安にならないでください。
今回は、元ケースワーカーである私の実体験と現場の裏事情に基づき、医療券がない状態での受診プロトコルや、現場の職員がどう動いているのか、そして特に注意してほしい「申請中の受診」について、教科書的な回答ではないリアルな情報をお届けします。
- 元CWが教える「医療券なし受診」の現場のリアルな運用実態
- 最もリスクが高い「生活保護申請中(決定前)」の受診対策
- オンライン資格確認のタイムラグと現場で起きているエラーの対処法
- マイナンバーカードを「申請時」に作るべき経済的・実利的な理由
生活保護受給者が医療券なしで受診する緊急時の手順

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まず結論から断言します。生活保護受給中であれば、手元に医療券がなくても受診は可能です。
私が担当していたケースでも、夜間や土日の急患対応は頻繁とはいえませんが、月に数回は発生していました。役所の職員(ケースワーカーや医療扶助担当の専門職員)は、こうした事態に慣れています。「怒られるかも」「迷惑をかけるかも」と遠慮して我慢することだけは絶対に避けてください。生活保護関係なく、医療を受ける権利はありますし、そもそも命を守るための制度ですから、緊急時は堂々と利用して良いのです。
夜間や休日に急病で病院へ行く方法

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役所が閉まっている時間帯の受診について、私が現役時代によく受けていた問い合わせや実際の対応フローを元にお話しします。
多くの自治体では、ケースワーカーだけでなく、医療扶助(レセプト管理や医療券発行)を専門とする職員が配置されています。夜間や休日であっても、緊急時の対応マニュアルやフローは存在しますので、安心してください。
緊急時は、迷わず病院へ行ってください。その際、最も重要なのは病院の窓口での伝え方です。病院の受付スタッフさんも、あなたが生活保護受給者かどうかわからない状態では対応に困ってしまいます。私が担当していた受給者の方には、いつも以下のようにお伝えしていました。
- 「現在、〇〇市の生活保護を受けていますが、急病のため医療券を持っていません」
- 「翌朝一番に、市役所の担当課に必ず連絡を入れます」
なぜ「翌朝連絡する」の一言が重要なのか
病院側としても、あなたの病状はもちろんですが、経営的な視点で見ると「治療費を確実に回収できるか」は懸念事項のひとつです。もしあなたが無保険で支払い能力がない場合、病院側が未収金のリスクを抱えてしまう事情もあります。
そこで、あなたが制度を正しく理解しており、「翌朝すぐに役所へ連絡して医療券の手配をする」と宣言することで、病院側は「ああ、この患者さんは手続きをわかっている人だ。役所から確実に医療券が届くなら安心だ」と判断し、スムーズに診療を受け入れてくれます。現場の感覚として、この一言があるだけで、窓口トラブルの9割は防げると感じています。そのように感じる理由としては、生活保護世帯が1世帯だけではないからです。近隣のクリニックや病院のスタッフは生活保護を受給している方の対応を何件を対応しています。そのため、生活保護の医療費請求について手慣れていることが多いです。私の肌感覚ですが、「この人は本当に生活保護ですか」と問い合わせを医療機関からほとんど受けたこともありませんでした。
翌朝一番にケースワーカーへ連絡する

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緊急受診を無事に終えたら、翌日の朝一番(月曜の朝や祝日明けの8時半〜9時頃)には、必ず福祉事務所へ電話をください。正直なところ、現場の職員は時間外に受診すること自体はあまり気にしません。「昨日の夜、大変でしたね」と思うくらいです。
しかし、「事後報告がないこと」だけは本当に困ります。これがトラブルの最大の原因です。
仕組みを説明しましょう。医療券というのは、「受診の事実」と「本人の申告(または病院からの連絡)」があって初めて発行できる公文書です。連絡がないまま数日が過ぎると、病院の事務担当者から役所に「先日受診された〇〇さんの医療券、まだ届かないんですけど……?」と問い合わせが来ます。
その時点で初めて担当者は受診の事実を知ることになり、「えっ、聞いてないよ!」と慌てて確認作業に入ることになります。これでは事務処理が遅れ、病院にも多大な迷惑をかけてしまいますし、あなたの信用も下がってしまいます。
「担当の〇〇さんお願いします。受給者の(自分の名前)です。昨夜、腹痛で〇〇病院の救急外来を受診しました。事後になりますが、医療券の発行をお願いします。」
この一本の電話さえあれば、役所側はすぐにシステムで「急迫受診」の処理を行い、医療券を作成し、病院へ郵送する手配ができます。あなたが再度病院へ行って医療券を届ける必要はほとんどありません(病院と役所の間で郵送のやり取りをしてくれます)。
【重要】生活保護「申請中」の受診が実は一番の正念場

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この記事で私が最も伝えたい、そして最も注意喚起したいのがこのセクションです。実は、すでに保護を受けている方よりも、「生活保護を申請してから決定するまでの期間(最大2週間)」にある方こそ、医療受診のハードルが最も高く、トラブルになりやすいのです。
生活保護を申請している最中というのは、手持ちのお金も尽きかけていて、精神的にも肉体的にも一番きつい状態であることが多いです。高齢の方や持病がある方が申請に来られるケースも多々あります。しかし、この「申請中」の段階では、当然ながら「受給者証」はありませんし、後述するマイナンバーカードでの資格確認もできません。
つまり、制度上は「生活保護が決定するかわからない」という宙ぶらりんな状態なのです。
あわせて読みたい:生活保護の申請が通る確率は?データが示す9割の真実と元職員の現場対策
医療機関側のリスク管理と「10割請求」

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医療機関側からすれば、もしあなたの生活保護申請が「却下」された場合、かかった医療費を誰からも回収できなくなるリスクがあります。そのため、あなたが「申請中です」と伝えても、病院のマニュアル通り「決定通知が出るまでは、一旦10割全額または医療保険の1割から3割を窓口でお支払いください」と言われる可能性があります。
私がケースワーカーだった頃は、申請時の面接相談で「近々、病院に行く予定はありますか? 定期薬は切れていませんか?」と必ず確認していました。しかし、もし担当者に聞かれなかった場合は、ご自身から必ず「申請中に病院へ行く必要がある」と伝えてください。
そして、実際に申請期間中に病院に行く際は、以下の交渉術を使って乗り切ってください。
「現在、生活保護を申請中です。確認が必要であれば、市役所の保護課(担当部署)へ連絡を入れてください。担当者が事情を説明してくれます」
このように、病院から役所へ直接確認の電話を入れてもらう(あるいは病院の目の前で担当者に電話する)のが最も確実です。担当の職員が電話口に出て、「間違いなく申請を受理しており、現在審査中です。決定次第、医療券を送付します」と病院側に保証することで、病院側も安心して「支払い保留」や「受診対応」をしてくれるケースもあります。
この「決定までの2週間」は、いわば制度のエアポケットです。遠慮なく役所を巻き込んで、担当ケースワーカーを味方につけて乗り切ってください。
医療券を忘れた時の窓口での対応
次に、緊急ではないけれど、日中の受診でうっかり医療券を忘れてしまった場合についてです。これも焦る必要はありません。
もし忘れてしまったら、窓口で素直に謝り、「担当の福祉事務所に確認の電話をしてもらえませんか?」と頼んでみてください。その場で病院スタッフが役所に電話をかけ、職員が資格確認(口頭確認)を行えば、医療券があるのと同様に受診できるよう取り計らいます。
これは、日常的によくある光景です。もちろん、忘れないに越したことはありませんが、忘れたからといって受診を断られるようなことは通常ありませんので安心してください。また、医療券の取り扱いは様々です。医療券を本人に渡さず、直接医療機関に送付する自治体もありますので、そもそも医療券を持参とは?と思われる方もいるかもしれませんね。
必ず指定医療機関を選ぶ重要性
一つだけ、皆さんの財布を直撃するかもしれない注意点をお伝えします。それは「病院選び」です。生活保護法では「指定医療機関」での受診が原則とされています。
生活保護法(生活保護の医療扶助)の指定を受けていないクリニックや整骨院は意外と存在します。特に、美容系クリニック、一部の歯科(インプラント専門など)、新設されたばかりの整骨院などは要注意です。
初めて行く病院の場合は、必ず受付で「生活保護の医療券は使えますか?」と確認するか、事前に担当ケースワーカーに「あそこの病院に行きたいんですけど大丈夫ですか?」と聞いておくのが無難です。
指定医療機関の所管は都道府県です。ホームページで公開されている場合もありますので、「生活保護 指定医療機関 〇〇県」などで調べてみると一覧を確認することができる場合があります。
受給者証などの身分証を提示しよう
医療券がない状態で病院に行く場合、あなたの身分を証明するものが何もないと、病院側も対応に困ってしまいます。「生活保護です」という言葉だけでは、信用を得るのが難しい時代だからです。
そこで役に立つのが「生活保護受給者証(受給証)」です。これを持っていれば、少なくとも「現在保護を受けている」という公的な証明にはなります。受給者番号や担当部署が書いてあるので、病院側も役所への問い合わせがスムーズに行えます。
もし受給者証もない(あるいは発行されていない自治体の)場合は、マイナンバーカードや運転免許証、障害者手帳など、とにかく「自分が何者か」を証明できるものを提示してください。それさえあれば、病院側も「どこの誰かわからない人」を診察する不安から解消され、柔軟な対応をしてくれるはずです。
生活保護で医療券なしで受診した際の費用と返金

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ここからは、少しシビアな「お金」の話について、現場の実情を交えて解説します。基本的には制度で守られていますが、一時的な立て替えが発生するリスクと、その回収方法を知っておいてください。
窓口で一時的に10割または1割から3割の負担になるケース
先ほど触れた「申請中」の方や、夜間で役所と連絡がつかない場合、あるいは病院の方針として、一時的に医療費の全額(10割または1割から3割)を請求されることがあります。
「生活保護でお金がないのに、なんで?」と思うかもしれませんが、これは病院側が「貸し倒れ」などのリスクを回避するためであり、ある程度仕方のないことです。特に申請中の方は、手持ちのお金もなく、証明書もなく、体調も悪いという「一番きつい状態」になりがちです。
あわせて読みたい:生活保護医療費の本人支払額とは?自己負担の仕組みを完全解説
私が担当していた時は、こうした事態を避けるために、事前にご本人から詳しく事情を聞き取り、「この方は間違いなく生活保護申請をしています」と病院に連絡したケースもありましたが、全てのケースでそれができるわけではありません。
もし窓口で請求され、手持ちのお金がない場合は、正直に「所持金がありません」と伝えて相談してください。多くの公的病院では、事情を鑑み、支払いを待ってくれることもあります。一番良くないのは、お金がないからといって黙って帰ってしまうことです。
自費払いした医療費が返金される条件
もし窓口で泣く泣くお金を支払ったとしても、絶望しないでください。それはあくまで一時的なものです。後日精算すれば、必ず戻ってきます(返金されます)。
ただし、これには「領収書」と「診療明細書」が必要です。これらがなければ、役所はどうすることもできません。
| ステップ | やるべきこと |
|---|---|
| 1. 受診時 | 支払いを済ませ、領収書・診療明細書を必ず受け取る。 |
| 2. 翌日 | ケースワーカーに連絡し、「自費で受診したので医療券を病院(または自宅)に送ってほしい」と依頼する。 |
| 3. 後日 | 届いた医療券と領収書を持って、病院の会計窓口で返金を受ける。 |
| 4. 返金 | 領収書と引き換えに、その場で現金を返してもらう。 |
ここでもやはり、「すぐ連絡」が鉄則です。月をまたいでしまうと、病院での返金ができなくなり、役所での「償還払い(しょうかんばらい)」という非常に面倒で時間がかかる手続き(現金が戻るまで1〜2ヶ月かかる)になってしまいます。これは、特に申請期間中に起こりやすい事案で、生活保護になる前の医療保険証で、医療機関が保険請求を行ってしまい、医療機関から医療機関に支払いが行われたときにこのような面倒な手続きが発生します。申請期間中は特に「受診した月内」に解決するように動いてください。
マイナンバーカードを利用した資格確認

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最近導入された「医療扶助のオンライン資格確認」についても、現場のリアルな状況をお伝えします。これは、マイナンバーカードを病院のリーダーにかざすだけで、医療券なしで受診できる便利な仕組みです。これがあれば、窓口で周囲に聞こえるように「生活保護です」と口頭で伝える心理的負担も減ります。
ただ、現場視点で正直にお伝えすると、まだシステムは発展途上です。特に、生活保護が決定した直後や、転居した直後などは、自治体の担当者がシステムにデータを登録する作業に時間がかかり、データの反映にタイムラグが生じることがあります。
もし病院でカードをかざして「資格なし」「該当なし」などのエラーが出た場合は、カードの不具合ではなく、役所側の登録作業がまだ完了していない可能性が高いです。その際は焦らず、すぐに福祉事務所に連絡し、「マイナ受付でエラーが出ている」と伝えてください。その場で職員が病院に電話し、資格があることを伝えて対応してくれるはずです。
(出典:厚生労働省『医療扶助のオンライン資格確認について』)
マイナンバーカードは「申請時」についでに作るべき理由

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最後に、私の個人的な見解も含めたアドバイスです。これから生活保護を申請する方、あるいは現在申請中の方は、今のうちにマイナンバーカードを作っておくことを強くおすすめします。
理由は、利便性もさることながら「交通費(お金)」の問題です。
生活保護が決定した後、マイナンバーカードを受け取るために市役所へ行くとしても、そのための交通費は原則として支給されません(※自治体の運用によりますが、私用外出扱いになることが多いです)。自宅が役所から遠い場合、自腹でバス代や電車賃を捻出するのは、ギリギリの生活の中で非常に痛い出費になります。
申請の手続きで役所に来たついでにカードの申請手続きも済ませてしまえば、余計な出費と手間を省けます。現在は電子処方箋の導入なども進められており、今後はマイナンバーカードがないと医療を受ける上で不便になる場面が増えていくはずです。いずれ作るのであれば、一番負担の少ないタイミングで、かつての手続きと一緒に終わらせてしまうのが最も賢い選択だと思います。
領収書と診療明細書の保管は必須
繰り返しになりますが、何があっても「領収書」と「診療明細書」は捨てないでください。
医療を受けた証明書でもありますし、税金の控除としても使えてしまう書類です。医療扶助が適用になった場合、支払いが生じていないことになりますので
医療機関の領収書は返却しなければいけないものです。
領収書は財布の中に大切に保管し、無事に返金されるまでは絶対に手放さないでください。家に帰ってクリアファイルに入れるまでは、大事なものとして扱ってください。
結論:生活保護は医療券なしで受診が可能

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長くなりましたが、まとめです。生活保護受給中に具合が悪くなったら、医療券がなくてもまずは病院へ行ってください。
- 夜間・休日の受診は現場ではよくあること。遠慮は不要。
- 一番大事なのは「翌朝一番のケースワーカーへの報告」。
- 最もリスクが高い「申請中」の受診は、役所と相談して乗り切る。
- マイナンバーカードは早めに(できれば申請時についでに)作っておく。
福祉事務所の職員も、皆さんが必要な医療を受けられない事態、手遅れになってしまう事態は一番避けたいと考えています。手続きの不備を恐れず、まずはご自身の体を守る行動をとってくださいね。この情報が、あなたの不安を少しでも和らげることを願っています。