
こんにちは。福祉キャリア羅針盤、運営者の福祉屋です。
最近、親の介護や実家の相続を考え始めた方から、成年後見制度の見直しはいつから始まるのかというご相談をよく受けます。現行制度のデメリットが気になり、法改正のパブリックコメントや新しい骨格のニュースを見て、具体的な施行時期がいつになるのか不安に感じている方も多いのではないでしょうか。また、家族信託やデジタル遺言といった新しい手続きとの関係性についても気になりますよね。この記事では、そうした疑問を整理し、これからの備えとしてどう動けばいいのかを一緒に考えていけたらと思います。
- 成年後見制度の法改正(2026年民法等改正案)に向けた現在の進行状況と施行スケジュールの見通し
- 「終身制の廃止」や「補助への一元化」など、新制度で使い勝手がどう変わるかの具体的なポイント
- 家庭裁判所の裁量による「継続リスク」など、法改正後も残る注意点とデメリットの理解
- 新制度を待つべきか、家族信託やリレー型後見など「今すぐできる生前対策」に取り組むべきかの判断基準
成年後見制度の見直しはいつから始まるのか
いざという時のために成年後見制度の利用を考えているものの、新しい制度がいつから使えるようになるのか気になっている方は多いと思います。まずは、現在どのようなスケジュールで法改正が進められているのか、そして新しいルールの全体像について詳しく見ていきましょう。
法制審議会における議論の現状

成年後見制度は、2000年に介護保険制度とともに「福祉の車の両輪」としてスタートした非常に大切な仕組みです。かつての「禁治産・準禁治産制度」のように戸籍に記載されるといった人権侵害的な側面をなくし、ノーマライゼーションの理念を掲げて誕生しました。しかし、実際に運用が始まってから四半世紀が経過する中で、現場からは「とにかく使い勝手が悪い」「一度利用すると途中でやめられない」という悲鳴に近い声が多く上がっていました。実際、支援を必要としている認知症高齢者などが数百万規模でいると推計されるにもかかわらず、利用者は約24万人にとどまっており、制度が国民から敬遠されている実態が浮き彫りになっていたんです。
私自身、ケースワーカーとして74世帯ほどを担当していた経験がありますが、多重債務や虐待、DVなど、人の人生の非常に重い局面に幾度も立ち会ってきました。その中で、身寄りがなく判断能力が低下した方の賃貸契約に際し、保証人が立てられず、異例ではありますが福祉事務所の組織名を緊急連絡先として許可したり、私が直接不動産屋さんの窓口へ足を運んで大家さんを説得したりしたこともあります。現場でこうしたギリギリの支援を行うたびに、「もっと柔軟で使い勝手の良い公的な後見制度があれば…」と、制度の壁に歯がゆい思いをしてきました。こうした現場の専門職が抱える板挟みの葛藤や精神的負担については、過去記事の「社会福祉士が病む構造的理由とキャリアを守る生存戦略」でも触れていますが、それだけに今回の抜本的な見直しは、現場の人間としても本当に画期的な第一歩だと感じています。
歴史的な大きな動きとして、2024年2月に法務大臣からの諮問を受けたのち、パブリックコメントなどを経て、2026年2月には法制審議会から「改正要綱」が正式に答申されました(出典:法務省『成年後見制度・成年後見登記制度』)。さらに、2026年4月3日には、成年後見制度の抜本的な見直しと「デジタル遺言」の創設を二本柱とする民法等の改正案が閣議決定されたんです。これにより、長年くすぶっていた法改正の動きは単なる検討段階から抜け出し、いよいよ国会で法案として本格的に審議されるフェーズへと大きく前進しました。
法案成立から施行までのスケジュール

さて、法案が国会に提出され、閣議決定まで進んだとはいえ、「じゃあ明日からすぐに新しい成年後見制度が使えるようになるの?」というと、残念ながらそうではありません。今回は民法という国家の基本ルールそのものを書き換える大改革になるため、実際に私たちが利用できるようになるまでには、いくつもの段階を踏んで慎重に準備を進める必要があるんです。全体的なスケジュール感やマイルストーンをしっかりつかんでおくことは、ご家族の今後の対策を練る上でとても重要になってきますね。
おおまかな流れとしては、まず2026年から2027年にかけて、衆議院・参議院の両院で法案の審議が行われ、可決・成立を目指すことになります。そして、無事に法律が成立したとしても、そこからが実は大変なんです。法律が変わったことを国民に広く知らせる周知期間はもちろんのこと、実務を担う家庭裁判所の運用マニュアルの抜本的な作り直し、全国の自治体や法務局、そして何より金融機関における窓口対応やシステムの改修など、途方もない作業が待っています。さらに、実際に現場で支援を行う弁護士、司法書士、社会福祉士といった専門職への再研修も必須になります。
| 時期 | プロセスおよび進行状況の詳細 |
|---|---|
| 2024年2月 | 法務大臣が法制審議会に対し、成年後見制度の見直しを含む民法等改正を諮問 |
| 2025年6月 | 法制審議会部会が「中間試案」を公表し、広くパブリックコメントを実施 |
| 2026年2月12日 | 法制審議会が各界からの意見を集約し、法務大臣へ「改正要綱」を正式に答申 |
| 2026年4月3日 | 政府が制度見直しとデジタル遺言創設を柱とする民法等改正案を閣議決定、国会提出 |
| 2026年〜2027年 | 国会(衆参両院)での法案審議、および改正法の成立見込み |
| 2027年〜2028年頃 | 周知期間、家庭裁判所の運用マニュアル策定、関連システムの改修・整備期間 |
| 2028年度中(目標) | 改正法の施行、および新制度の実際の運用開始見込み |
【補足】国会の審議状況による変動
上記のスケジュールはあくまで現時点での有力な目標です。政治情勢や国会での審議の長引き、あるいはシステム構築の遅れなどによって、スケジュールが数ヶ月から1年程度前後する可能性もゼロではありません。今後のニュースや法務省の発表には引き続き注目しておきたいところです。
現実的な運用開始時期の予測
先ほどの表やスケジュールでも触れましたが、現在国会に提出されている法案が無事に成立したとしても、現実的な施行時期(実際に私たちが家庭裁判所に申し立てを行い、新しいルールでの運用が開始されるタイミング)は、早くても2028年度中(2028年4月〜2029年3月)になる見通しが最も有力視されています。なぜ法律が成立してから施行までに2年〜3年もの長いタイムラグが生じるのかというと、社会全体のインフラを根底から整える必要があるからです。
特に大きなハードルとなるのが、家庭裁判所のキャパシティと金融機関の対応です。現在でも家庭裁判所は多くの家事事件を抱えてパンク気味ですが、新制度になれば「この人はどの支援が必要か」を個別に細かく審査する「オーダーメード型」になるため、裁判官や書記官の負担は一時的に激増します。そのための業務フローの構築には膨大な時間がかかります。また、銀行の窓口でも「この後見人は定期預金の解約権限を持っているのか、それとも持っていないのか」を瞬時に判別できるシステムを作らなければ、大きな金融トラブルに発展しかねません。
このように、新制度を安全に動かすための準備期間として2028年という時期が設定されているわけです。ただ、この「数年間のタイムラグ」をどう乗り切るかが、今まさに親の認知症や財産管理で悩んでいるご家族にとって一番の課題になるかなと思います。「新制度を待ちたいけれど、親の症状は待ってくれない」というジレンマにどう向き合うか、戦略的な判断が求められる時期に来ています。
終身制廃止がもたらすメリット

今回の成年後見制度の抜本的見直しにおいて、利用されるご家族にとって間違いなく一番の朗報と言えるのが、長年の最大のネックであった「終身制(終わりのない後見)」の完全なる廃止です。これこそが、制度を使いやすくするための最大のブレイクスルーだと言っても過言ではありません。
これまでの現行法下では、一度家庭裁判所で後見開始の審判が下されると、本人の認知症などの判断能力が医学的に奇跡でも起きない限り回復しないため、原則として本人が亡くなるまで途中で制度をやめることが絶対にできませんでした。たとえば、「亡くなった父の遺産分割協議を終わらせるためだけ」とか、「誰も住まなくなった実家を売却して、母の介護施設の入居一時金を払うためだけ」といった、極めて限定的で一時的な目的のために制度を利用したとします。しかし、無事に実家が売れて目的が達成されたとしても、「じゃあもう専門家の支援は必要ないので終わります」とは言えなかったんです。結果として、全く面識のない弁護士や司法書士に対して、月額3万円〜5万円ほどの報酬を、親が亡くなるまでの5年、10年と毎月支払い続けなければならないという、とんでもない経済的負担を強いられていました。
しかし新制度では、これが「必要なときに、必要な期間だけ」利用できる有期型・目的型の仕組みへと大きく転換します。あらかじめ設定した「不動産の売却」などの目的が達成されれば、家庭裁判所の判断で後見をすっきりと終了させることが可能になる予定です。「一生、何百万円も費用を払い続けなければならないかもしれない」という恐怖から解放されることは、制度利用への心理的ハードルを劇的に下げる圧倒的なメリットですね。
補助への一元化と支援の柔軟化
現行の制度は、ご本人の判断能力の減退度合いに応じて、「後見(ほとんど判断できない)」「保佐(著しく不十分)」「補助(不十分)」という3つの類型にカッチリと分けられています。特に一番重い「後見」と判定されてしまうと、後見人に対して全財産の管理権や、本人の行った契約を取り消す権利など、強力すぎる権限が自動的に与えられていました。これは財産を守るという点では強力ですが、「過剰な保護」になりがちで、ご本人が自分のお金で好きなものを買うといった日常のささやかな自己決定権まで奪ってしまう構造になっていたんです。
改正案では、こうした硬直的な3つの枠組みを全廃し、制度の枠組みを「補助」へと一本化する方向で進んでいます。これは単なる名前の変更ではなく、「本人の残された能力を最大限に活かす」という深い意味を持っています。重度の認知症の方であっても、画一的に権利を取り上げるのではなく、この「補助」という器の中で支援を考えていくことになります。
オーダーメード型支援とは?
類型の一元化とセットで導入されるのが「オーダーメード型」の支援です。たとえば、「毎月の年金管理や日常の買い物は本人が自由に行う」「ただし、介護施設との複雑な入所契約や、高額な不動産の売買の時だけ専門家が代理人としてサポートする」といったように、本人にとって本当に手助けが必要な部分にだけ、ピンポイントで権限を設定できるようになります。
これにより、専門家にすべてを握られるという閉塞感がなくなり、ご本人の尊厳と意思を尊重しながら、必要なときだけプロの力を借りるという、本来あるべき柔軟なサポート体制が実現することになります。
制度利用におけるデメリット

ここまで、今回の法改正がもたらす素晴らしいメリットばかりをお伝えしてきましたが、物事には必ず裏の顔があります。「終身制が廃止されて途中で終われる後見になる」と聞くと、なんだか「家族の都合で、いつでも自由に始めたり辞めたりできる便利なサービス」になったと錯覚してしまいがちですが、ここに大きな落とし穴と注意すべきデメリットが存在します。
最も注意しなければならない点は、制度を終了させるかどうかの最終的な決定権(裁量権)は、あくまで家庭裁判所が握っているということです。家族が「目的が終わったからもう辞めたいです」と申し立てたからといって、自動的に許可が下りるわけではありません。
たとえば、「亡き父の遺産分割協議のために後見制度を利用し、無事に協議が終わった」というケースを想像してみてください。本来の目的は達成されました。しかし、その協議の結果、認知症のお母様が数千万円という多額の現金や預貯金を受け取ったとします。この時、家庭裁判所はどう考えるでしょうか?「目的は終わったけれど、こんなに大金を判断能力の低下したお母様とご家族だけで管理させるのは、オレオレ詐欺のターゲットになったり、親族が使い込んでしまうリスクが高すぎる」と判断する可能性が極めて高いんです。その結果、「本人の財産保護のために、やはり後見人はそのまま継続させます」と職権で強制的に継続させられてしまう事態も十分に起こり得ます。
福祉の現場では、単なる事務的な手続きではなく、人の「心」が複雑に絡み合った相談援助が求められます。私自身、親族間の根深い対立を調整するケースに数多く直面してきましたが、ご本人の本当の願いとご家族の意向がすれ違い、安全を確保しながら関係を再構築するには大変な労力がかかりました。裁判所が「親族だけでの管理はリスクが高い」と判断する裏には、こうした「争族」のリアルな現実が存在するのです。
【ご注意とリスクの認識】
法改正は「途中で終了できるルート」を開通させただけであり、「本人の財産を安全に守る」という制度の根本的な考え方が変わったわけではありません。ご家庭ごとの資産状況や親族関係によって裁判所の判断は大きく異なりますので、「確実に終わらせられる」と安易に自己判断せず、最終的な見通しについては必ず弁護士や司法書士などの専門家にご相談ください。
成年後見制度の見直しはいつから対策すべきか
制度が今後どのように大きく変わるのか、その全体像は見えてきたかと思います。でも、実際に自分や家族が今直面している状況に当てはめたとき、「じゃあ私たちは今すぐ動くべきなの? それとも2028年の新制度を待つべきなの?」と悩んでしまいますよね。ここからは、具体的な実務(特に相続)への影響や、今のうちからできる賢い生前対策について、さらに踏み込んで一緒に考えていきたいと思います。
遺産分割協議の手続きはどう変わる
成年後見制度が一番多く使われるきっかけの一つが「親の相続」のタイミングです。ご家族が亡くなり相続が発生した際、残された相続人の中に認知症などで「意思能力(物事を正しく判断できる能力)」がない方がいると、そのままでは法的に有効な遺産分割協議を一切行うことができません。実印を押しても無効になってしまうからです。
これまでは、この遺産分割協議を進めるためだけに成年後見制度を利用しようとしても、先ほどお話しした「一度始めたら一生やめられず、専門家に報酬を払い続ける」という強烈なデメリットのせいで、多くのご家族が利用をためらっていました。その結果、「まあ、手続きできなくても今のところ困らないから」と放置され、亡くなった親の銀行口座が凍結されたまま引き出せなくなったり、実家の名義変更ができずに「所有者不明土地」として全国で空き家が放置されるという、深刻な社会問題を引き起こしていたんです。
しかし、2028年度頃に新制度が施行されれば、この膠着状態が劇的に改善されると期待されています。「遺産分割協議を完了させること」という明確なゴールを設定して一時的に制度を利用し、無事に法定相続分通りに財産が分けられれば、そこで利用を終了させるという選択肢が現実のものとなるからです。これにより、相続手続きの最大のボトルネックだった「利用への躊躇」がなくなり、止まっていた実家の処分や遺産整理が一気に進めやすくなるはずです。ただし、前述の通り、協議後の財産額によっては継続の判断が下るリスクもあるため、事前のシミュレーションは欠かせません。
専門家報酬の負担軽減とリレー型後見

新制度の施行は2028年度頃の見通しですが、「実家の売却や相続手続きが今まさに必要で、あと2〜3年も待っていられない!でも、一生専門家に高い報酬を払い続けるのは絶対に避けたい」というご家族もたくさんいらっしゃいますよね。そうした過渡期にある現在、実務の現場で注目され、専門家たちが工夫を凝らして取り入れているのが「リレー型後見」というアプローチです。
これはどういうものかというと、遺産分割協議や複雑な不動産の売却など、どうしても高度な法律知識が必要な一時的な期間だけ、まずは司法書士や弁護士といったプロに後見人に就任してもらいます。そして、その面倒な法的手続きが無事にすべて完了し、あとは毎月入ってくる年金を管理して介護施設に支払うだけの「単純な日常の金銭管理」になった段階で、専門家が家庭裁判所の許可をもらって辞任し、あらかじめ候補として立てておいた親族(ご家族)に後見人のバトンを渡す(リレーする)というテクニックです。
この手法を使えば、複雑な手続きを安全に完遂しつつ、その後の生涯にわたる専門家報酬の負担を回避することができます。ただし、これを実現するには「なぜ途中で親族に交代しても大丈夫なのか」という筋道の通った詳細な報告書を作成し、家庭裁判所を納得させる高度な折衝能力が必要不可欠です。したがって、最初からこの「リレー」を前提として動いてくれる、親身で実力のある専門家を見つけることが成功の鍵になりますね。
デジタル遺言の創設とその仕組み

今回の2026年民法改正案において、成年後見制度の抜本的見直しと並ぶもう一つの巨大な柱が見逃せません。それが「デジタル遺言(保管証書遺言)」の創設です。これもまた、私たちの終活や相続の常識を根底から覆す可能性を秘めた素晴らしい仕組みです。
これまで、お金をかけずに自分で手軽に作成できる遺言といえば「自筆証書遺言」が一般的でした。しかし、この自筆証書遺言は、財産目録以外の本文を「すべて手書き(自筆)しなければならない」という、非常に厳格なルールがあったんです。高齢になって視力が落ちたり、ペンを握る力が弱くなったりしている方にとって、一文字でも間違えたら訂正印を押して…という作業は身体的にあまりにも過酷で、遺言を残すことを諦めてしまう方が後を絶ちませんでした。
そこで新しく創設されるデジタル遺言は、パソコンやスマートフォンを使ってキーボード入力や音声入力で作成したデジタルデータの遺言書を、そのまま公的な機関である法務局のサーバーに送信し、安全に保管してもらえるという画期的な仕組みです。
デジタル遺言がもたらすメリット
・長文を手書きする身体的負担が完全にゼロになる
・法務局という国の機関でデータ管理されるため、紙の遺言書につきものの「紛失」や、一部の親族による「意図的な隠蔽・改ざん」のリスクがほぼ100%防げる
・民間企業の遺言信託サービス等に比べて、手数料が数千円程度と極めて安価になる見通し
もちろん、ディープフェイク動画などのAI技術を使ったなりすましを防ぐため、マイナンバーカードを使った厳格な本人確認システムなどが導入される予定です。このデジタル遺言が普及すれば、「争族(相続トラブル)」を未然に防ぐ生前対策のハードルが劇的に下がると期待しています。
家族信託など生前対策の重要性

さて、成年後見制度がいかにオーダーメード型になって使いやすくアップデートされたとしても、そしてデジタル遺言が便利になったとしても、決して忘れてはいけない本質的なルールがあります。それは、法定の成年後見制度というものは、あくまで「本人の判断能力が落ちてしまった後に行われる、事後対策のセーフティネット」に過ぎないということです。裁判所が介入する以上、「本人の財産を減らさないこと」が最優先されるため、資産を増やすための投資や、節税のための生前贈与などは原則として一切できなくなります。
自分や家族の意思をしっかりと反映させ、状況に合わせてダイナミックで柔軟な財産管理を行うためには、ご本人がまだ元気で頭がしっかりしているうちに行う「事前対策」に勝るものはありません。そして、その事前対策の最強の切り札として現在急速に普及しているのが「家族信託(民事信託)」です。
家族信託とは、親が元気なうちに、信頼できる子どもなどと契約を結び、実家や預貯金の「管理・処分する権限」だけを子どもに移しておく仕組みです。名義は変わっても、そこから得られる利益(家に住む権利やお金を使う権利)は親のままです。これをしておけば、万が一数年後に親が認知症になってしまっても、成年後見制度を使うことなく、子どもの判断で実家を売却して介護費用に充てたり、大規模な修繕を行ったりすることが自由にできるんです。後見制度の「財産が凍結されて身動きが取れなくなる」という最大のデメリットを完璧にカバーできるため、今の時代、絶対に検討しておくべき生前対策と言えますね。
成年後見制度の見直しはいつから待つべきか

ここまで大変長くなりましたが、最後に一番の疑問である「成年後見制度の見直しはいつから待つべきか(今すぐ動くべきか)」という結論をまとめたいと思います。ここまでの情報を踏まえると、判断の分かれ目は現在のご家庭が置かれている「緊急性の高さ」に尽きます。大きく2つのパターンに分けて考えてみましょう。
すぐに現行制度を利用すべきケース(待ってはいけない!)
もし現在、親御さんが悪質な訪問販売や特殊詐欺のターゲットになって次々と被害に遭っていたり、あるいは年金が振り込まれるメインバンクの口座が完全に凍結されてしまって、日々の生活費や介護施設への支払いがショートしそうになっているなど、ご本人の生活や生存そのものが脅かされているトラブルが起きている場合です。この状況では、2028年の法改正をのんびり待っている余裕はありません。ご本人の命と財産を守るため、デメリットにはある程度目をつぶってでも、すぐに現行の成年後見制度(保佐や補助も含みます)の申立てを行い、裁判所の法的な保護の傘下に入ることが最優先事項かなと思います。
新制度を待ちつつ、事前対策を進めるケース(将来への備え)
一方で、「今のところ預金の引き出しもできているし特に生活に困っていないけれど、最近親の物忘れが増えてきて、将来認知症が進行した時が不安だから」という、いわゆる将来への備えの段階であれば、慌てて今の使い勝手の悪い成年後見制度に飛び込む必要は全くありません。
ただし、ここで「じゃあ2028年まで何もしないで待とう」とするのも危険です。なぜなら、2028年までの間に親御さんの認知症が急激に進んでしまい、「契約する能力がない」と判断されれば、結局は使い勝手が良くなったとはいえ、自由の利かない法定後見制度のお世話にならざるを得ないからです。ですので、この2〜3年の猶予期間を使って、ご本人が元気で意思疎通ができる「今」のうちに、先ほどご紹介した「家族信託」の組成を進めたり、新制度をにらんで財産の整理をしたりと、自らの手でコントロールできる「事前対策」をしっかり固めておくのが、最も賢く、後悔しない備え方ですね。
【おことわりとお願い】
本記事でご紹介した成年後見制度の施行時期、デジタル遺言の手数料、手続きにかかる費用やリスクなどに関する内容は、政府の法制審議会の発表や一般的な実務に基づく現時点での目安です。法律や制度は、個人の資産状況やご家庭ごとの事情によって適用結果が大きく異なります。正確な最新情報は法務省や裁判所の公式サイトで必ずご確認いただき、実際にご自身でアクションを起こす前の最終的なご判断や手続きについては、決して自己流で行わず、必ず弁護士や司法書士といった専門家にご相談くださいますようお願いいたします。